緩やかな午後。窓の外の空はただ明
るく、冷房の唸る音以外にはさして耳
障りな音も無い。
そんな当たり前の様な幸せな休日の
中でさえ、オレは追い立てられていた
。
「あー!!もぅ!終わる?これ今日中
に終わる!?」
1DKの狭いオレ部屋、無数の紙片共が
地雷の様に散乱している中で、眞樹は
見栄もへったくれも無い姿でただわめ
いている。
「お前さ、何で高校生にもなって夏休
みの宿題を最後の一日まで残す?」
「しょうがないじゃん!この夏は忙し
かったんだって!」
「………例えば?」
「海に行ったでしょ?山に行ったでし
ょ?あ、ゲームもクリアしたよ?」
指を折りながらあっけらかんと答え
る姿に、たまらず偏頭痛がする。
「っていうか、何で陽司は全部終わっ
てるのさ!?あたしと一緒に遊んでた
のに!」
「オレはお前みたいに無計画じゃない」
投げる様にそう言うと、文字通り数
学の宿題を眞樹に向かって投げてやる。
「ま、一息つこうぜ。焦ってもしょう
がないしな」
ついでに買い置きのアイスバーも投
げてやると、ビニールを剥きながら眞
樹は散乱したプリントの海へ倒れ込ん
だ。
「…これさえなければ幸せなのにな」
「これがあるから、楽しいんだろ?」
アイスバーを咥えながら、眞樹はしか
めっ面で、体を起こした。
「何?陽司もしかしてマゾ?」
ぼさぼさの頭にアイスバーを咥え、
キャミソールのストラップはずり落ち
ている。そんな姿で半眼になれば視線
だけで、人を殺せそうだ。
「違う。メリハリって奴だ。辛い事が
あるからこそ、楽しさってのはよけい
楽しくなるんだろうが」
「私はずっと楽しいだけがいいや…」
眞樹が勢い良く寝転がると、紙片の
波が舞った。
おしまい。